早稲田大学 ICT・ロボット工学拠点

スーパーグローバル大学創成支援(SGU) Waseda Ocean構想
Waseda Goes Global:A Plan to Build a Worldwide Academic Network
that is Open, Dynamic and Diverse

早稲田大学

海外派遣学生/Student

斎藤 菜美子 Namiko SAITO

派遣期間
平成31年4月~平成31年7月
派遣先大学
Italian Institute of Technology (IIT)
派遣先国・地域名
イタリア・ジェノバ

派遣プログラムの内容について

iCubというヒューマノイドロボットを用いたマニピュレーションの研究に従事しました。ロボットを用いた画像認識や物体検知を専門にする研究室に所属し、ポスドクの方に面倒を見ていただきながら研究を進めました。触覚と視覚、両方を用い、Deep Neural Networkモデルによるマニピュレーションを研究したく、テーマを重ねて相談した結果、「iCubにピザを切らせる」という題材になりました。iCubの動作中、頭部に搭載されたカメラの画像と力覚センサの情報を取得し、iCubに現時点の状況を把握させて、次の瞬間の適切な動作を生成させることを繰り返します。ピザの位置を視覚で捉え、触覚を使って机を傷つけることなくピザをカットさせることを目標としました。

学習成果について

初めて扱うロボットと開発環境であったため、実験環境を整えiCubを正常に動かすまでにかなり時間がかかりました。まず初めに、ロボットを目標の軌道通りに動かしてその動作中のデータを取ります。日本で使っていたロボットと同じ制御方法では振動し動作軌道もずれてしまったため、iCubの性能に合わせて、動作速度を状態に合わせて随時柔軟に変えられるようにコーディングして対応しました。続いて、取得したデータを用いてNeural Networkモデルをtrainingして、iCubに、どのように関節を動かすと対象がどのように変化するのか(どう動けばピザが切れるのか)を学習させます。最後に評価として、適当な形のピザを適当な場所に置いても切ることができるか実験しました。実機を使った実験は間に合わず、シミュレーション上の実験にはなりましたが、成功させられました。
英語に関しては特に、話す際に、単語がわからなくても他の言い回しでどうにか伝える応用力がつきました。当初は言葉がパッと出てこず伝えるのに大変苦労しました。しかし、わからないことがあった際に質問しないと次に進めない状況も多く、何とか伝えようと必死に言葉を並べるところから始め、徐々に成長できました。言葉の壁をさらに崩せるよう、これからさらに勉強するつもりです。

海外での経験について

イタリアで生活していく中で、話し方や人との距離の取り方、時間感覚、食への意識など様々なことが全く異なり、文化の違いを肌で感じました。特に、話し方は戸惑いました。まず、意見を聞かれることが多く、さらに突っ込んだ質問をされたり、反論をされたりするので、自分の考えをしっかり持っていなければなりません。また、おしゃべりな人が多く、他の人が話していてもたたみ込むように話すことも多々あります。そのスピードについていけずもどかしい思いをしました。
良い意味で適当な文化は、力が適度に抜けていて心地よく感じました。お店では、おしゃべりしながら仕事をしていたり、仲良くなった店員さんにはおまけをしてもらえたりします。バスの発着や待ち合わせに関して、時間にルーズなところはもどかしく思うことも多々ありましたが、仕事をする時間と休む時間をきっちり分けている点は見習うべきだと感じました。
 海外での経験を通じ、日本の文化を考え直す良い機会になりました。日本ではマニュアル通りに、正確に、完璧を求めすぎていることが多い気がします。もう少し肩の力を抜いてもいいのではないか、と感じました。

今後の進路への影響について

IITには博士課程学生や、ポスドクの方が多く在籍しており、出身もイタリアの他にもインドやドイツ、スペイン、中国など様々でした。彼らの研究や進路の話を聞いて、視野を広げることができました。研究分野を大きく変えている方や、3つ以上の大学や研究所を渡り歩いている方、異分野を横断した研究をしている方もいて、やりたいことを一つに絞る必要や、年齢にとらわれて焦る必要は無いのだと気付かされました。そして、やりたいことがあった際に、それを実現できる場所と手段を自ら掴んでいくことと、うまく回りの助けを得ながら自分の考えを実現していく力が重要だと感じました。これから、日本だけでなく、世界を視野に入れて、長いスパンで考えてロボットの研究を追求したいと思うようになりました。そして、そのためにも一層視野を広げ、自身の研究者としての能力を底上げせねばならないと感じています。

その他

研究室の友達やアパートのオーナーさんを部屋に呼んで、肉じゃがや親子丼、御味噌汁を振る舞ったのが良い思い出です。みなさん興味深々で作り方や材料など質問が絶えませんでした。また、研究室のサッカーチームにも所属し、IIT主催の研究室対抗サッカー大会にも参加しました。サッカーはほぼ未経験で試合への貢献は全くできませんでしたが、その分応援して、チームの皆と仲良くなれました。他にも休みの日や研究終わりに、一緒に観光したり、海辺に行ったり、バルに行ったり、ビリヤードをしたりと、研究だけではなく、現地の人と交流できたのが最高の経験になりました。このつながりを大事にして、これからも連絡を取り合いたいです。
このような素晴らしい機会をくださった、先生方、SGUの皆様には誠に感謝しております。異文化を理解し、視野を広げることができ、海外でも生きていける、という自信も得られました。将来に活かせる経験ができました。